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自発的にらせん構造を形成させる

らせん構造は,構造自体に由来する不斉(ヘリシティー:右巻き・左巻きの別)を持ち,キラルな環境を与える有用な構造です。 直鎖状(ひも状)の構造を一回の刺激でコイル状に巻くことができれば,ヘリシティー由来の機能の発現やその制御という観点からも大変有用です。 我々は,金属との錯形成によって自発的に一重らせん構造を形成するオリゴマー状分子の開発を行ってきました。

錯形成による自発的ならせん構造形成のためのオリゴsalen型配位子

この分子はsalen型の四座キレート配位部位を複数連結した構造を持ちます。 salen型の配位部位でd-ブロック金属(亜鉛など)と錯形成すると,それぞれの配位部位で四つの配位結合が形成され,分子全体がらせん構造に変化する設計です。 錯形成後はsalen金属錯体部分のフェノキソ酸素がらせんの内部を向くため,金属イオンの取り込みが期待されます。

直鎖オリゴsalen配位子の錯形成によるらせん構造形成のコンセプト
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直鎖オリゴsalen配位子から得られるらせん型錯体の予想構造

実際,各種鎖長(n = 2,3,4)のオリゴsalen型配位子を亜鉛(II)イオンと錯形成させたところ,らせんの内部空間に希土類やアルカリ土類金属を取り込ませたときに安定ならせん構造を形成することがわかりました。 このらせん構造の右巻き・左巻き間は平衡となっており,金属の組み合わせは同じでも鎖長が長くなる(巻き角が大きくなる)とその反転が遅くなることが明らかとなりました。 また,この動的らせん反転の速度は,金属の種類を変えることにより調節できることを明らかにしました。 このような動的性質は,らせん構造を外部刺激に応答させて動かすために重要な性質であり,動的なキラル機能コントロールのために適した骨格であることが示されました。

オリゴsalen型配位子(n=2,3,4)の多重の錯形成により得られたらせん型錯体。 guestはアルカリ土類金属や希土類金属。
ビスsalen型配位子の錯形成により得られたらせん型錯体の結晶構造。 この図のguestはEu3+
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トリスsalen型配位子の錯形成により得られたらせん型錯体の結晶構造。 この図のguestはLa3+
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[References]
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