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Inorganic Chemistry

金沢大学 無機化学研究室

• 酸素酸の縮合反応

 モリブデン、タングステンやバナジウムの酸素酸(オキソ酸)は、酸性条件で脱水縮合反応によりポリオキソメタレートと呼ばれるナノサイズの陰イオン性分子へと成長する。正確な水分量と酸の化学量論を調節することで骨格を制御できる。酸が添加されると酸素原子がプロトン化され、ヒドロキソ化学種が生成する。ヒドロキソ基は陽イオン性の金属イオン中心を求核攻撃しヒドロキソ架橋を形成するので結果として多核化する。そして、プロトン移動による脱水反応が進行すると酸素原子による架橋が形成される。

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• バナジウム酸化物分子の骨格変換反応

 バナジウム酸化物分子の小さな構造を順に大きくすることで自由に骨格を制御しながら酸化物ナノ分子を合成する方法を開発している。ポリオキソメタレートの一種であるポリオキソバナデートは、バナジウム酸化物骨格を持つ分子であり、有機合成のように自在に骨格を制御できるようにすることが目標です。

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• 3種類の基本単位から3種類のナノ構造

 バナジウムは、四配位四面体型、五配位四角錐型、五配位三角稜錘型、六配位八面体型などの多様な配位環境が可能です。特にピラミッド型でもある五配位四角錐の配位環境が重要なのはバナジウムの特徴である。これらの配位多面体が頂点や稜を共有してつながることで、大環状配位子による平面錯体、球状錯体、最密格子状錯体と異なる幾何構造を持つナノクラスターを形成する。
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四配位四面体型

四面体単位が頂点共有により環状につながるとクラウンエーテルのような大環状無機配位子が形成され他の金属イオンに配位できる。その結果、平面状の錯体が形成する。

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五配位四角錐型

ピラミッド型でもある四角錐単位は、フラーレンに似た球状構造を形成する。球内のキャビティーにはゲストイオンを取り込むことができる。

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六配位八面体型

六配位八面体単位が稜共有により隙間なく集合すると、NaCl型の最密充塡格子を切り出したような構造が可能となる。

• 無機ホストゲスト錯体の段階的合成

 環状バナジウム配位子によるディスク状錯体の脱テンプレート反応後に、陰イオンテンプレートと錯形成を行うと、テンプレートをゲストとするお椀型錯体が構築される。さらにルイス酸による縮合により、お椀にフタがされて球状のナノクラスター分子となる。  

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• 分子でキャッチボール

 かご型のバナジウム酸化物分子ドデカバナデートは、塩化物イオンをキャッチした後に変形し、イオンを閉じ込めることができます。あたかもキャッチボールのミットの動きのように、ボールを離しません。その結果、銀イオンのような外部試薬とも反応しなくなります。イオン結合性のホスト分子だから可能な、しなやかな変形です。可逆的に元の形に戻りボールを離すこともでき、プロトンの脱着により構造変化を制御できます。