概要

プロジェクト発足の背景

本学では、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」の位置付けをもって改革に取り組むこととし、グローバル社会をリードする人材の育成と世界に通用する研究拠点の形成を進める「戦略的研究推進プログラム」を推進してきました。
平成26年度からは、この取り組みをさらに強化した「超然プロジェクト」と「先魁プロジェクト」を実施しています。 本学に優位性のある研究グループをさらに強化し、当該分野で世界トップ100に入る研究拠点の形成を目指すプロジェクト 「超然プロジェクト」として、平成27年度、「超分子による革新的マテリアル開発の拠点形成」が採択されました。

プロジェクト目的

現代社会の急速な発展に伴い、その基盤を支える機能性材料の多様化・高機能化が強く求められています。 近年、これらのニーズに対して、超分子が示す特異な機能が注目され、様々な特性をもつ超分子が開発されています。

超分子を用いた高機能固体材料の開発への挑戦

超分子化学は、原子、分子に次ぐ第三の階層の粒子を「超分子」(分子同士がまとまって次の階層の粒子を形成したもの)としてとらえ、その構築や解析を行う化学の一分野です。この概念の創出に関連した研究業績でJ.-M. Lehnほか2名が1987年ノーベル化学賞を受賞し、この数年も毎年のように超分子化学者がノーベル賞受賞予想にノミネートされるなど、次世代の化学を担う一大分野として認知されています。 近年の超分子化学の研究の潮流は、分子やイオンの選択貯蔵・放出、隔離、輸送、分離、ナノ合成容器、さらには触媒やセンサーなど、分子間相互作用の精密設計に基づく高機能マテリアル創成に向いています。 また、超分子マテリアルは生成・分解を容易に繰り返すことができることから、再生可能材料としての利用が期待されています。本プロジェクトでは、超分子の特性を活かした革新的な分子の貯蔵・分離・変換マテリアル研究を推進し、次世代のエネルギー・環境材料、及び生活の質的向上に繋がる材料の開発を目指します。 実用化の観点から、固体材料の開発は極めて重要ですが、これまでの超分子を用いた材料開発では、液体が主であり、固体材料の開発はほとんどされておらず、未開拓の分野です。 本プロジェクトでは、各研究コアが融合・連携し、超分子を用いた高機能固体材料の開発に挑戦します。

サステナブル社会に貢献する多様な超分子創成研究の展開

本研究では、5つの研究コアが連携し、以下に示す3つテーマに取り組みます。

[1]多孔性環状超分子の創製と分子吸着状態の制御

ガス・分子を選択的かつ高密度で吸着できる精密に空間サイズが制御された固体多孔性環状超分子を開発します。この超分子の創製は「超空間制御と創成コア」が担当し、「ナノ構造解析コア」が吸着状態を詳細に解析します。 さらに「動的構造変換コア」により、選択的かつ容易なガス・分子放出機能が加わった機能性超分子に発展させます。

[2]刺激応答型らせんポリマーの創成と材料開発

「キラル高分子の創成コア」と「動的構造変換コア」の協力により、刺激応答型らせん超分子を開発します。「ナノ構造解析コア」により、外部刺激を与えた状態で、らせん超分子の構造・状態解析を行い、新たな材料設計への指針を与え、自己修復可能な機能性超分子の開発を推進します。

[3]超分子触媒の設計や反応開発

「精密分子設計と合成コア、「超空間制御と創成コア」、「動的構造変換コア」、「キラル高分子の創成コア」の協力により、超分子型のマルチ金属触媒および超分子ポリマー触媒を開発します。開発された超分子の固体状態の構造・ダイナミクス解析を「ナノ構造解析コア」が行い、研究を進めることで、固体触媒開発に発展させます。

以上のよう、本拠点では物質化学系の強みである超分子創成と動的変換技術・ダイナミクス解析技術を駆使し、機能発現のメカニズム解明と蓄積されたノウハウに基づく物性発現設計に基づいた多様な超分子創成研究を行います。 これらの研究は、サステナブル社会に役立つ革新的マテリアルの開発に繋がることが期待されます。

キーワード

  • 超分子
  • 複合物性
  • 自己組織化高分子
  • 機能性高分子
  • Supramolecule
  • Complex property
  • Self-assembled polymer
  • Functional polymer